相続のカタチ

投稿日:2022/12/01

希望どおりの葬儀をしてほしいけど、何かしておくことはあるの?

亡くなったあとの葬儀や身の回りのものの整理の方法など、最後の時の自分の希望を実現してもらうにはどうすればよいでしょうか?

たとえば、同居している配偶者や子の親族や親族同然のお付き合いのある知人があれば、その方にお伝えしておけば実現してもらうことも可能かもしれません。
しかし、身近にお願いできるほど近しい人がない場合には「もう何年も会っていない親族が自分の望むような葬儀を行ってくれるのだろうか」など、ご不安もあるのではないでしょうか。

それでは、葬儀に関する希望などの死後事務を遺言書に記しておけばよいのでしょうか?
しかし、残念ながら死後事務の部分に関しては、民法の要件を満たした遺言書を作成しても指定された人に対する法的な効力が発生することはありません。

遺言は、相続に関すること、身分に関すること、財産の処分に関すること以外の部分には法的な拘束力はないとされています。
また、よく耳にするエンディングノートも、生前の考えを遺族の方が実現するための参考にはなりますが、法的な効力はありません。

死後事務委任契約とは。

遺言の対象とならない葬儀方法の希望など生前の意思を実現するための方法として、第三者と「死後事務委任契約」を締結するというものがあります。

 

○死後事務委任契約とは?

文字通り、自分の「死後」の「事務」を「委任する契約」のことです。
ご自分と任せる相手との間での合意により締結される「契約」といった形式になるため法的な拘束力があります。

 

○どういった人が契約するの?

契約ができる人であれば特に制限はありませんが、次のようなご事情の方が検討される方で多いとされています。

①近親者が自分より先に他界していて、葬儀を執り行ってくれる人がいない方。
②親族がいても遠方に居住していたり、疎遠のため色々な手続きを担わせるのに気が引けたりするという方。
③親族と不仲であるため、しっかり供養してもらえるのか不安な方。

 

○どんな内容をお願いするの?

一般的には次のような死亡後の事務手続きを委任します。

・火葬、納骨、埋葬、通夜、告別式、戒名に関する事務
・医療、老人ホームその他の施設利用、介護サービスに関する契約終了後の費用の支払
・行政官庁等への諸届け事務
・家財道具、身の回りの生活用品の処分

 

○誰に依頼するの?

契約の相手方となる人には制限がありません。
親族や近しい人に任せられないようなときに検討されるものであるため、弁護士や司法書士の法律専門職などに依頼するのがよいでしょう。

ただし、専門職を相手に選んだとしても、死後事務委任契約の内容は親族が行うような内容の事務を任せることになるため、生前から密にコミュニケーションをとるなど信頼関係を構築できている相手が望ましいと考えます。

たとえば、遺言書作成を依頼した専門家であれば全体の流れが把握できているため、死後事務委任契約も進めやすいかもしれません。

最後に

「終活」という言葉の認知度が高まってきているとはいえ、遺言書の作成も死後事務委任契約も、自身がいない時のことを考えて思いを巡らせるため、頭も体力も使います。

亡くなったときに「あれをしてほしい」「こうしたい」との思いがあるけど困ったとき、お近くの専門家へご相談してみてはどうでしょうか。
お話の内容によって遺言でできること、死後事務委任契約でできること、それぞれを検討しながら思いを実現するための準備ができるはずです。

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