相続のカタチ

社長さん!遺言書はありますか?(その1)

事業承継を考える経営者にとって、どのようにして次の世代に事業を引き継ぐかは大変気がかりなところです。
後継者への承継やM&Aによる承継など色々なパターンが考えられます。

ところで、突然やってくる事業承継である「相続」への備えはいかがでしょうか?
「まだまだ先のこと」とお考えの方も、お早めに相続に備えた遺言をしておきましょう。

遺言がないと後継者の地位が不安定に。

相続が発生すると、遺言がない場合、被相続人の財産は民法の規定によって分配されることはご承知の通りです。

もし被相続人が経営者である場合には、自宅や預貯金、貴金属や骨董品といったプライベートな財産だけでなく、もっぱら事業に使用していたものであっても経営者の名義であれば相続財産に組み込まれ、相続人に承継されます。


①会社経営者の場合には
 保有する会社株式や会社の事業のために使用していた土地建物・設備など
 経営者個人の名義であれば相続の対象となります。

②個人事業主の場合には
 屋号付きの銀行口座や事業に使用している財産など
 あくまでも個人の財産として相続の対象になります。


事業承継は、営業上の技術や取引先との関係を引き継がせるだけでなく、事業に必要な財産を後継者に引き継ぐことも重要なテーマです。
承継する相手とあらかじめ取り決め譲渡契約を締結するような通常の事業承継とは異なり、経営者が亡くなり相続が関係するときは「緊急事態の事業承継」ともいえます。

そんな緊急事態に備えて、事業に関する財産は後継者や会社の経営に関与している相続人が取得して、安定した経営が続くような内容の遺言を残しておくことが肝心です。


もし有効な遺言がされておらず、相続財産となったものが法定相続分で分割された場合を想定してみましょう。

一般的に経営に必要な株式や預貯金は可分な財産であることから法定相続分で分散します。
また、不可分な財産である不動産などは相続人の共有の状態になります。

たとえば議決権の行使の場面や土地建物の利用に際して、権利を有する相続人間で意見が相違してしまえば、何かを決定しようとてもそれが難しくなります。
ひいては安定した経営を望むことができず、結果、事業承継の成功とは言い難いのではないでしょうか。

また、遺産分割協議によって営業用財産を後継者に集中させようとしても、そのための遺産分割の協議は相続人全員の合意がなければ成立しません。
後継者は他の相続人の協力が得られない限り、事業に関する財産を単独で取得できません。

また協議の成立まで長引けば、その間の事業用資産に対する権利行使ができないことにもなりかねません。
そのため、この場合にも安定した経営ができなくなるおそれがあります。


そのような状況に陥るのを防ぐためにも、経営者は遺言で備える必要があるのです。

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